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仮面(06年6月)


最近、デザインの世界では「ユーザー中心」という言葉が出てきています。user centeredをそのまんま日本語にしたものなので意味がかなり分かりにくいですが、ようは、使う人のことをもっとちゃんと考えて、モノを作りましょうってこと。当たり前といえば当たり前なのですが、そんなことがよく言われています。特に、ソフト開発とかwebデザインとかそういう世界で。

確かに、webデザインなんてのは「作り手の発想が中心」で、それを見る人のことはあんまり考えられていなかったりします。企画を練るときに「このサイトのターゲットユーザーはキャリアウーマンだ!」とか、ものすごーく「薄い」設定はされますが(そして、それにそって配色計画(色使いですな。年齢層が高めなら落ち着いた色にするとかそんなこと)とかフォント選びとか考えられたりする)、そこから突っ込んだことにはなかなかならず、結局、発注者側の適当な意見と作り手側の適当な意見が合わさった、「てきとー」なものになっちゃったりしがち。開発者(プログラムと書く人)が面倒くさいから、とかいって、それをベースにまとめあげられちゃったりすることもあったりして、あんまりみんな(見る人含めてね)が納得したものというのはできあがりにくかったりします。

user centerd design(UCD)の場合は、まず、ターゲットユーザーとかを徹底的にまとめあげて「要求分析」(ようは、何を作りたいかはっきりさせること)をし、使う人のことを考えて見た目をまず作り始める。そして、最後にシステム部分を組む。プログラムはあくまでそのデザインを実現するために組まれるわけで、普通のデザインとは逆転するわけです。普通はプログラムにお化粧をするのがデザインですから。そしてそれを、ユーザビリティ評価(ベータテストみたいなもん。人に使ってもらって、使いやすさを見る)を何回もやって、よりブラッシュアップしていく。こんなことをするわけです。

UCDで作られるものはまだそう多くありません。実際問題、webの場合、そんなことができるのはよっぽどの大きな会社だけだったりする。制作期間もかかるし、コストもかかっちゃう(本来、開発費は下がるはずなのだけれど、なかなか手間もかかるので、そううまくいかない)ので、普通はそんなこと考えもされないのです。

UCDはそんなわけで、これからのデザイン、ということができるわけですが、そんな中で用いるといいかな、と思う方法に「ペルソナ法」ってのがあったりします。ペルソナってのは、あのユングのペルソナ(persona)ですな。

心理学の世界でのペルソナは日常生活を送る上での、本性とかを隠しちゃっている性格のことです。「社会的な性格」とでもいいましょうか。ペルソナという言葉はもともと「仮面」という意味ですから、それを考えればわかりますな。なーんか嫌だけど、とりあえずこの人はえらいから挨拶しとくか、みたいな。

この発想を開発の現場に利用するのがペルソナ法で、モノを使うだろう将来のユーザーをできるだけ詳細に思い描き、その仮想のユーザーのことを徹底的に掘り下げて、性格付けして、そこにあわせてモノ作りをしていく方法のことです。もちろん、この仮想のユーザーは現実のユーザーを代表した、最大公約数的な人物でないとダメですけれども、それはそれでマーケティングデータとかから組んでいったりする。

これはアラン・クーパーさんという人が言い出したもので、結構使えるものだと思う私です。例えば、このペルソナ法の場合、そのユーザーがどんなライフスタイルを送っているか、シナリオを起こしたりする。そして、そのシーンで、そのモノがどう使われるか、をシナリオに組み込んだりする。

まあ、これを書き出すと、パソコンを目覚ましにして起き、起きからまずコーヒーを飲みながらメールチェックし、みたいな、「いねえよそんな人」も生まれがちなのですが、ちゃんと現実的に組めば、これほど強力な「ユーザー」もいないわけで、デザインとかを進める上で、自分の頭だけを頼りしないものを進めていく、いいロールモデルになります。

「ペルソナ法」は何も特別なものではなく、「このサイトのターゲットユーザーはキャリアウーマンだ!」とかいう薄い設定を、もうちょっとまともに突っ込んでいくことから生まれるものなわけで、日頃、そういうものに関わることが多い人(プロデューサーだのディレクターだの)には取っ付きやすいものだと思います。

最近なんかうまくいかないなー、とか思うことがあったら、こういうものも使ってみてはどうでしょう? そしてちょっと、user centeredなことも考えてみませんか?

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