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修論戦争中の書評。(05年12月)


だんだん加速しながらうおー、と叫びながら修士論文を書いとります。ゴールテープは目前なのですが、なかなか切れない、そんな感じ。

さて、そんな切羽詰った状況ながら、あれこれ本も読んでおります。ちょいと紹介しておきましょう。

まずは、実験心理学の視点でコンピュータの世界を読み取ったという「実験心理学が教える人を動かすテクノロジ」(B.J.フォッグ著/日経BP)を立ち読み。明らかに「実験心理学が」というのに引っ張られて、コンピュータ本のコーナー(隣にあったのは「mixi本」とかだもの)にあったこれを手にとったのでした。

帯には「どうすればコンピュータは説得力を獲得できるのか」という、一見なんだかよくわからないものが書いてあって、ちょいと戸惑いましたが、中身は単純。なるほど、パソコンとかWebとか使うことで人の考えとかやることがどう変えられていくのか、という内容の本だったのね、と思ったりした。で、さらによーくよーく読んでみると、人間工学的な情報デザインに関する本でした、という結論に至ります。あれ、心理学はどこいった。

ちなみにいろいろ調べてみたところ、この本の著者であるフォッグさんは「捕獲学 captology」というのを研究していて、この本もその研究成果から出てきたもののようです。といいつつ、捕獲学という明確な学問分野があるはずもなく、その創設者自体がフォッグさんだったりするので、「説得のためのテクノロジーとしてコンピュータ(ネットワーク)を使うことを研究していて、その成果がこの本」というのが正しい理解でしょう。「個々のユーザにあわせてより特定した情報を提供せよ」とかいう情報のカスタマイズとか、そういうことがこの本では述べられているわけです。どちらかといえば、Webデザイナーとかが読むといい本です。

原題は「Persuasive Technology: Using Computers to Change What We Think and Do」persuasiveというのは動機とか誘引という意味と、説得という意味があるので、そのまんま訳すと、「説得技術:コンピュータを使うことで人々は思考、行動を変える」ですね。

うーん、タイトルがなんだか誇大広告っぽい。「実験心理学が」というのもなんか違う感じがします。内容としてはよくできているので、情報デザインの本ということにしちゃえばよかったのに、とか思いました。が、マーケット的には「心理学」ってつけると売れるんだろうな、とかいうことも思うので、なんだか微妙なところ。

微妙ついでにもうひとついきましょう。地下鉄「赤坂見附」駅にでっかいポスターが貼ってあるのを見つけて、ちょっと、なんだかな、と思ったのが、2005年12月7日に創刊する「psiko」(ポプラ社)という雑誌です。

手元のパンフには「日本で初めてのサイコロジー・ジャーナル」とありますが、アメリカのPSYCHOLOGY TODAYみたいな感じで心理学に踏み込んでいく雑誌とはちょっと違う気がします。なんていうか「癒し系雑誌」って感じ?

というか、同タイトルの雑誌がちょっと前まで出ていましたね(bk1のサイトにその形跡が)。これは直販のみだったので、今回創刊されるのは、それの書店流通版、つまり、再創刊ということなのでしょうか。

前のキャッチは「『こころの健康』と現代社会を考える月刊誌」とかいうの。今回創刊されるものも、パンフを見る限り、それにかなり近くて、臨床とかに興味がある一般の人向け。それを「日本で初めてのサイコロジー・ジャーナル」と読んでいいのかどうかはだいぶ疑問がありますが、まあ、日本では「心理学=カウンセリング」みたいな感じが強いので、致し方ないのかな、という気がしないでもないけれどもなんか叫びたいような気がしないでもない(どっちだ)。

ちなみに「psiko」は「psycho」のエスペラント表記とのこと。エスペラント語ってのは英語に代わって、世界の共通語になろうと作られた「人工言語」のこと。「人工言語」といいつつ歴史はかなり古くて、確か、19世紀後半に考え出されたものではなかったかと思います。こんな言語を作ったのは、平和、平等な世の中を作ろう!→でも、英語だなんだはそれぞれ歴史があって、民族同士の争いだなんだの火種になりかねん!→も一度ラテン語を復活させよう!→でも、ラテン語難しいじゃん→なら、何の影響も食らってない世界共通語を作っちゃえ!とかいう理由があったと記憶。

昔、ちょっとだけ調べたことがあって、それの知識をフル回転させると、文法構造はほぼヨーロッパ言語のそれで、単語も英語のそれをちょっと捻じ曲げたみたいなものになっている(ということは、英単語の素になっているドイツ語とかフランス語とかをちょっと捻じ曲げたものともいえる)ことが多く、まあ、理解しようと思えば理解できないものではないのですが、いかんせん「人工言語」なので、熱心な信奉者もいることはいる反面、世界中のほとんどで使われていない言語といえます。そのため、エスペラント語で書かれた「エスペラント学会」のサイトはなんとなく理解できるけど誰も読めないというすごい状態が発生中です。

でまあ、エスペラント語のことは別にどうでもいいのですが、とりあえず、もうすぐ本屋さんで買えるようになりますよ、ということなのでした。そっち系が気になる人はゲットしてみてはいかが。680円とかなりお手軽なお値段になるようなので、「カウンセラーとかなりたいなあ学生」とかでもゲット可能な気がします。

ちなみにこの手の「癒し系」って、私的にはちょっと苦手です。そもそも「癒し」という使い方が嫌い。実際、「癒し」という単語は国語辞典には載ってません。「癒す」(病気や傷などをなおす)という動詞が原型で、それに対応するのは「癒える」(病気や傷がよくなる)という自動詞なのです。「癒し」という言葉は新開発の日本語なのだ。

「癒し系」ってそもそも何よ? このファジー(あいまい)な感じが「日本」という気がしないでもないですけれども。英語のheal、healed、healingというのとはまたちょっと違う感じですよね(英語のそれは結構、精神的に大きな言葉。普通はhealよりcureを使う)。なんか日本の「癒し」は特殊な気がします(言語学的に分析)。

とーと、あちらこちらに話が飛びましたが、とりあえず、私は修論戦争へと舞い戻ります。では!

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