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レポートを書こう。リターンズ(2003年11月)


もう年末です。大学ではそろそろ卒論、修論が締め切り(だと思う)。書いている方はもうひと踏ん張りです(もう締め切られてるよ、って人は、口頭試問の準備でもしましょう)。

さて、以前にご覧の皆様にせっつかれて「レポートを書こう。」というコラムをアップしました。どうしてもレポートの書き方がわからない、何をどう書いたらいいのか見当もつかない、という人が結構いるということで書いてみたものです。

ただ、そこで書いたのは社会心理学の話だったということもあって、レポートを書く中でも結構苦労する「実験系」のレポートの書き方には一切触れませんでした。ということで今回は、より「実験」に即したレポートの書き方を「私なりに」フォローしたいと思います。

まず、実験系のレポートの章立てを考えてみましょう。これは考えてみなくても、実際に「学会誌」に掲載される形をパクってくればいいです。よって、

「アブストラクト(全体の要約)→目的→実験方法→結果→考察→参考・引用文献」

というのが一つの流れとなります。アブストラクトをつけるかどうかは書くものによっても変わると思いますが(長い文章を書く場合はつけておいたほうがいい)、そこから先はほぼ普遍的な書き方と思ってください。

で、レポートを書く時は、その前提となる実験、調査が終わっているはずです。ある程度調べたから、報告書を書きましょうというわけですからね。ということで、ここが一つポイント。

「すべてが終わっているのだから、目的と考察以外は過去形で、特に『〜という結果が得られた』のように受身(英語で言えば、be 〜ed)で書く」

これは非常に重要なことで、時系に対する配慮であると共に、第三者の視点で論文を書くという意味で、気をつけたいところです。

加えて、これは全体に言えることですが。

「『単文』で書く」

これがまた重要なことです。

たとえば、以下のような文章があるとします。

「私はきょう7時半に起きました。まず顔を洗いました。そのあとご飯を食べました。歯磨きをしました。そこで一度部屋に戻りました。タンスから服を取り出しました。それを私は着ました」

このような文章は、普通の世界では、こう書かれます。

「私はきょう7時半に起き、まず顔を洗い、その後ご飯を食べ、歯磨きをし、そのあと一旦部屋に戻って、タンスから服を取り出し、それを着ました」

で、レポート、論文を書くときは必ず前者のように、「一つのイベントで文一つ」になるように書きます。一見面倒くさいように思えますが、実際読む立場になってみると、なぜそうなのかわかるはず。後者のような文ではイベントとイベントの間で不必要な推測が可能だったり、重要なことが抜け落ちる恐れがあります。それでは困るので、一つ一つ細かく説明していきます。

「目的」では基本的にはどういう謎があるのか、先行研究ではそれをどう調べ、どう見解を出しているのか、そして自分はそれをどうしたくて、どんな実験を行ったのか、なんてことを書きます。これは書いてみるとわかりますが、意外と書きにくいセクションです。ですから、他のセクション、つまり、方法と結果、そして考察を書いたあとに、ここに戻って書く、というのが結構よかったりします。

「方法」というセクションは実験系レポートではかなり重要な位置にあります。で、ここの書き方の特徴は、「それを読んだ別の誰かが、その実験をやろうと思ったらやれるようにこと細かく書く」ということです。

たとえば、パソコンを使って実験をやったんだとしたら、メーカー名、機種名までちゃんとしっかり書くことが求められます。音を聞かせる実験をしたんだったら、どんなCDの何曲目を、具体的にはこのプレイヤーとこのスピーカーで、音量の大きさはこのくらいにして、そのとき周りの環境はこうして聞かせました、ちなみに、被験者には耳に障害がある人はいませんでした、って、ここまで書く必要があるでしょう。

「結果」はとにかく簡潔に実験結果やそれの統計処理した結果なんかを書きます。ここでのポイントは「〜という結果が出たのは、〜だったからではないだろうか」といった解釈は書かないこと。それは別に「考察」というセクションで述べてください。あと、図表を使うときは、その図とか表のタイトルの入れ方に注意。これには決まりがあって、「表のタイトルは表の上に、図のタイトルは図の下に」ということになっています。あと、「表を書くときは横罫だけで書く」というルールもあります。あと、数値の書き方とか、まあ、いろいろありますが、そこら辺はなんか本とか読んでください(いっぱいあるので面倒くさい)。

最後、「考察」は自分の思いのたけを伝える場所です。私はこう思う、今後はこうしたい、そういうことを書くのがこの場。書きたいことを書きましょう。

参考文献、引用文献の書き方はこれはそれぞれのルールにのっとります。例えば論文だったら、それを投稿する学会のルールにのっとります。まあ、多くの場合はAPA(アメリカ心理学会)が決めた「論文の書き方ルール」みたいなもんにのっとれば大丈夫だと思いますが…。

ちなみに、論文を書く場合は論文がどんなものかを示すキーワードをつけたり、アブストラクトも日本語のものだけではなく、英語のものをつけることが多いです。

そんなわけで、今回は結構ディープに「レポートの書き方」について触れてみました。最後に前回同様、「私が昔書いたレポート」をサンプルとして載せておきます。なんかの参考にしてください。ていうか、テクニカルターム(要因分析とか、t検定といったものもそうかな?)が結構出てきますが、まあ、それはとりあえず無視して、あ、こんなもんなんだ、と思っていただければ幸い。

今回載せるのは「心的回転 mental rotation」に関するものと、「視覚的探索 visual search」に関する2つのレポートです。分野で言えば認知になりますね。ちなみに後者のレポートでは、3要因実験なのに、なぜか2要因のときにやるt検定をやっています。これは「やって!」って頼まれたからで、結果的にはANOVAが正しいです(^^;)(この辺のことは統計の本を読もう!)。ちなみに、両者とも参考文献は省略しました。

[心的回転(mental rotation)における絵画的コードに関する実験]
[視覚的探索(visual search)における情報処理の特性に関する実験]

ま、がんばって書こ、ってことで。

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