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教員紹介 三嶋恒平

[経済学部准教授 三嶋 恒平+]

経済学部准教授
三嶋 恒平

私の専門は産業発展論、国際経営論、工業経済論であり、途上国経済と企業戦略について考察しています。より具体的には、成長著しい新興国市場に挑む企業の国際戦略と組織的な進化を明らかにしたい、企業行動と組織、イノベーションという観点からグローバル化時代における途上国産業の発展モデルを明らかにし、各国や時代に適切な工業化戦略を提示したい、という目的のもと研究をすすめています。こうした研究を志したきっかけは、大学の学部生のとき、タイやインドなどの発展途上国を旅してまわり、そうした国々の貧しさと人々の明るさ、あるいは明るそうにみえたことにギャップを感じ、その背景にあるだろう経済的なメカニズムに興味を持ったことにあるように思います。

私はこうした研究について、オートバイという一つの製品を軸としながら、それにまつわるバリューチェーンすべてを見てやろう、調べてやろう、というスタンスで進めていて、むしろ、ずばりこれが確固とした専門だといいきれない、というほうが実態に近いといえるでしょう。

こうしてオートバイの材料となる鋼材メーカー、ブレーキやチェーンなどの部品メーカー、オートバイを組み立て、販売するメーカー、実際に顧客に販売しメンテナンスを行うディーラーという上流から下流までの一連の関連企業を訪問し、それに関与する官庁、地方自治体にも聞いてまわることになりました。あわせて、その過程において研究開発論、生産管理論、組織論、労務管理論、マーケティング、ブランディング、国際経営、イノベーション・マネジメント、開発経済学、産業論と多様な学問分野のサーベイが必要になり、後追い的に必死になって取り組まざるを得ず、それらを視角としながら、見てきたこと、聞いたことの意味をあれこれ考えているのが現状です。

また、地域研究者のように一つの国に特化して、経済や産業だけでなく、その国の言葉、文化、社会について丸ごと理解してきたわけではありません。そうした、研究上の劣位を自覚し、さらには補うべく、オートバイ産業についてベトナムからスタートし、タイ、インドネシア、ミャンマーと東南アジアをベースとしながら、インド、バングラデシュ、ブラジル、ナイジェリア、ケニアと各国横断的な調査、研究を行ってきました。

最近の力を注いでいる研究は主に次の二つでしょうか。第一に、新興国におけるイノベーションを戦略形成プロセスから明らかにしようとしています。戦略形成プロセスとは意思決定の集中度と戦略行動の同時性から類型化され、個別企業の戦略形成プロセスは企業と産業の相互作用により共進化しながらイノベーションを創出するなど、産業レベルにも大きな影響を及ぼすとされています。従来の多国籍企業のグローバル戦略では新興国の拠点は意思決定において主体的役割を果たさず、先進国にある本社や工場とは数段階遅れた製品モデルの市場投入や既存のルーティンの導入といった戦略行動に終始したとされてきました。しかし、近年、市場拡大と生産増大に伴い、新興国はイノベーションの創出拠点としても重要性を高めるようになりました。私は調査を通じて実態を踏まえながらこのメカニズムを検討し、企業の競争優位にどのように影響するかを検討しています。

第二に、東アフリカ共同体(EAC)諸国における自動車産業振興の支援です。これまで述べてきたような研究をベースとしながら、EACの政策立案者や関係企業の方々とともに自動車産業のマスタープランの作成支援に取り組んでいます。オートバイは相対的に国内市場が大きな規模を有しているため、そうした国内市場をトリガーとした産業連関の誘発をねらえないか、中古車輸入に依存した自動車産業から脱し一部国産化を図れないか、これらの段階的な国産化のスケジュールはどのようなものか、が課題となっています。

現在、通信教育過程では卒業論文を担当しています。論文は問いとそれに対する主張、仮説がきっちり設定できるかどうかがポイントになると思います。そのためにはテーマに関係した先行研究の十分なサーベイが不可欠となります。というのも、先行研究の不備を指摘することが当該研究の意義を示すことにつながるからです。さらに問いと主張をつなぐものが実証となりますが、その方法はいくつかあります。私のスタンスのようにフィールドワークに基づきながら定性的に検討していくこと、統計的な手法によりリジットに仮説を検証していくこと、資料を集め歴史的に叙述していくことなど色々なアプローチがあります。いずれにせよ、問いと主張の相関関係あるいは因果関係を明確にし、結論まで一貫性をもたせていく必要があるでしょう。卒業論文の作成は困難も多いとは思いますが、ひとつひとつのハードルを乗り越えていくことで、皆さんの知見を豊かにし、人生をより彩りあるものにする、と私は考えています。

これまで通信教育課程で接する機会のあった学生は多くはありませんが、どの学生も皆、学業に対して真摯であることに驚かされました。学生の熱い思いが込められた卒業論文をより良いものとすべく、私もその一助となるよう精一杯頑張りたいと思っています。

『三色旗』2017年2月号掲載

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