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人格とは?


人格はpersonality、そう、パーソナリティのことです。知能、思考から感情、性格まで、人の心のすべての側面を統合したものをいいます。ヒトを人にさせているのが人格です。

personalityはもともとラテン語のpersona(ペルソナ)に由来します。これは劇用の仮面の意。ここから、人格は環境との関係により作られ、変わるといわれるようになったわけですね。

その一要素ともいえる性格は英語でcharacter(キャラクター)と書きます。これは「刻み付けられた言葉」という言葉が元。生得的で変えにくい、という性格のイメージにこれまたぴったしです。

実はこの2つ、明確には区別できません。あえていうなら、使用頻度が違うくらい。ヨーロッパでは性格が、アメリカでは人格という言葉が使われることが多いです。

日本ではもっぱら「人格心理学」の名称が使われますから、ここではそれでいきます。

さて、人格心理学では、人にはある程度一貫性があって、状況が異なってもその人らしい行動を取ると考えます。そのため、知覚とか感情という一要素を見るときでも、あくまで全体との関係の中で考えていきます。

そしてその人格は、イド、自我、超自我からなるフロイトの精神分析的アプローチ、クライエント中心療法で知られるロジャースの現象学的アプローチ、ワトソンの行動主義的人格理論などなど、さまざまな形で考えられています。

人を人格の特徴でグループ分けする類型論(典型的な性格像で分ける。たとえば、内向的、外交的とか)、特性論(行動する傾向で分ける。たとえば、協調性、情緒安定性など)というものもあります。

このようにいろいろあるんですが、ここではあえて巷ですんごく大勢の人が信じている血液型性格論についてちょっと書きましょう。

血液型性格論はものすごく古くからあるもので、ルーツは1920年〜30年代と言われています。唱えたのは教育学者の古川竹二という人。もちろん、「血液型占い」ようなものではなく、ちゃんとしたまじめなものでした。そのため、外交官の採用試験とかにも影響して、「O型じゃないと外交官にはなれないよ」なんてことまでなったほどです。

血液型別の特徴はこういうものですよね。

A型…意志が強い、理性的、自発的
B型…根気がない、でしゃばり、活動的
O型…温厚、多感、控えめ
AB型…外面上はB型、内面はA型

これは1928年に古川竹二が行った分類ですから、今とは違うものもあるかもしれません。A型=神経質とかそういうのはないですし。でもまあ、一応参考程度に見ておいてください。

これは一度、科学によって捨て去られます。が、1970年代に入って復活、80年代には本が山ほど出て、一般にも定着、今にいたるわけです。

科学的に捨て去られた理由は簡単です。ABO式血液型はもともと、酸素運搬役であるヘモグロビンを作っている糖鎖の部分的な違いです。それ以外の何者でもありません。それにこれ以外にも血液型は何十種類もあります(一度、理科年表の後ろのほうに載ってる染色体の遺伝子座を見てみてください)。たった1つのこれだけで、複雑な性格が判断できる、なんてあんまり考えられないんですね。

また、このような人格心理学的なアプローチからも否定されています。

まず、さっきの性格の特徴に、別の血液型のラベルを貼ります(例:AB型の性格特徴にO型と貼る)。そして、それを見てもらいます。で、そこに書いてあることで自分に当たっているなと思うものを言ってもらいます。そうすると、ほんとは全然違う血液型の項目なのに、私はこういう性格です、と指摘しちゃうことが見られたのです。

これはラベル効果と呼ばれます。本当に血液型で性格が測れるなら、こういうことは起きてはいけません。つまり、血液型性格論は信頼するには足らないのです。

(ただし、これでは説明が足りないという肯定論者もいます。脳内で働く糖鎖もあるから必ずしも否定は出来ない、遺伝論で考えればあるかもしれない、統計学的に正しい、ラベル効果自体存在しないなどなど…。そういう人がいてもいいと思います。でなければ、研究になりません)

ただ、ここでなぜ血液型性格論を出したかというと、実はこの論争ではなくて、血液型性格論が教えてくれる、人のいろいろなものの見方です。

たとえば、人を判断するときに、血液型がいろいろ左右することがありますよね。

「ある人がものすごくきっちり仕事をこなして、徹底的にやっています。
『あの人はA型で神経質だからなんでしょう』」

よくありがちな考えです。

でも「A型=神経質」というのは「A型という人の多くは神経質だから、この人もそうなんだろう」という考え方に根付きます。これは、暗黙のパーソナリティ論と呼ばれ、これが特殊化すると、「神経質な人はきっちりやる」という論理的誤謬を引き起こしたり、「だからA型の人はえらい。すごい」という光背(ハロー)効果を引き起こします。社会で起これば、ステレオタイプが作られます。

人は他者を判断するときに、こういうものを利用しているんです。複雑な人格の理解には、さまざまなことがいろいろと関わっているのです。

人は実際どうやって生きているか。それをさまざまな視点から見ていく学問が人格心理学であることを、この辺から読み取っていただけるといいかな、と思います。

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