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時事王(2022年) 代々木ゼミナール×読売中高生新聞

2022.12.02

[読売中高生新聞「時事王」掲載問題の解答ポイントなどを公開。テストに役立つ時事を学ぼう!+]

読売中高生新聞「時事王」掲載問題の解答ポイントなどを公開。テストに役立つ時事を学ぼう!

2022年12月2日号

A面「ワークシート」の解答ポイント

【問1】

資料を参考に、「オーバーツーリズム」とはどのような問題なのか、また、国内の主な事例についてまとめてみよう。

【解答例】
「オーバーツーリズム」とは、観光地に観光客が大量に押し寄せることで、自然環境や景観が破壊されたり、その地域に住む住民の生活に支障が出たりしてしまうことを言う。日本でも京都や鎌倉などの主要な観光地では、国内外の観光客であふれかえった結果、交通渋滞が慢性化し、電車やバスなども混雑し、その地域に住む人たちが利用できなくなることもあった。

【解説】
「オーバーツーリズム」とは、「観光公害」とも呼ばれ、コロナ禍前から世界各国で問題になっていました。しかしながら、政府の報告書(「持続可能な観光先進国に向けて」2019年6月、観光庁)においては、「現時点においては、(日本では)他の主要観光国と比較してもオーバーツーリズムが広く発生するには至っていない」という見方が示されています。とはいえ、実際に国内でも資料のような事例が起きている以上、何らかの対策を講じていく必要があります。

【問2】

資料を参考に、観光立国を目指す上で、政府や私たちが留意しなければならないことをそれぞれまとめてみよう。

【解答例】
観光業に頼りきりになってしまうと、コロナ禍のようなイレギュラーな事態が起こったときに、国内経済が大打撃を受けてしまいかねない。政府は、エンタメや高級フルーツの輸出など、観光以外にもこれから成長が期待できる産業をしっかり育成していけるような政策を実行し、観光業と他の産業のバランスをとっていくことが必要になる。また、私たちに出来ることとしては、一人ひとりが自分たちの住む地域や日本の魅力を知って、海外に発信していくこと、そして、文化の違うさまざまな国からの訪問者に、寛容な心を持って対応することが挙げられる。

【解説】
コロナ禍では、世界中のあらゆる観光地が苦境に立たされました。観光以外に目立った産業のない国では、深刻な事態も起きています。観光業に頼りきりだったスリランカでは、コロナ禍で海外からの観光客が激減し、多くの雇用が失われました。そこに物価の高騰などが重なり、政府に対する国民の不満が爆発し大規模なデモに発展、大統領が国外に逃亡したことは記憶に新しいでしょう。日本でもその地域の観光業への依存度によって、コロナ禍が地域経済にもたらす影響に差が生まれました。以上のような事例を踏まえ、観光立国を目指しながらも、観光業に頼りきりになることなく、他の産業の育成を進めていくことが重要になります。
紙面のアメリカのエバンさんの話にあるように、日本には世界中で人気を誇るマンガ・アニメ・ゲームがたくさんあります。日本に足を運ばなくとも、自国でコンテンツを楽しんでもらうことが日本の収益につながります。これから先、こういったカルチャーの担い手を育成することも、日本にとっては重要なのかもしれません。また、近年では他国に圧されがちですが、車や工業製品なども世界中から高く評価されてきました。AIや自動化など技術的な進歩がめざましい今こそ、こういった部門の技術者育成により力を入れていきたいところです。

【問3】

どちらかを選んで考えてみよう。

?あなたが住む地域で、あるいは、旅行で行ったことがある・行ってみたい地域で実際に起きている「オーバーツーリズム」の問題を調べ、その対策について考えてみよう。

?観光立国を目指す上で、あなたが住む地域の観光業を盛り上げるための施策や、私たちが出来ることについて考えてみよう。

【解答のポイント】
?

?

【解説】
本問は、読者の皆さんが住む地域、あるいは、旅行で行ったことがある・行ってみたい地域に合わせて選択したいずれかの問いについて考える形式になっているので、解答例は示さず、解答のポイントをそれぞれいくつか示しました。自分で考えた対策・施策が、ポイントを踏まえたものになっているか確認してみましょう。
解答を考える上で、実際に各国・各自治体で行われている対策・施策を調べてみたでしょうか。それらも参考にしながら、自分なりにオリジナリティのあるものが考えられるとより良いでしょう。
解答のポイントにある「環境や景観の保全」、「持続可能」は、最近の観光業のトレンドでもあります。地域の自然環境を守りながら、観光業を活性化させ、住民の暮らしを良くしていけるような観光地の開発や、サービスのあり方を見定め、旅行の設定を行う「サステイナブルツーリズム」という概念が近年提唱されています。

B面「テスト形式」の解答ポイント

【問題1】の問1について

ネアンデルタール人は現生人類とは異なる種で,既に絶滅してしまった化石人類の一種です。19世紀の半ばにドイツのネアンデル渓谷で化石が発見されたことからその名がつけられました。主に現在のヨーロッパ周辺に分布していたとされます。ネアンデルタール人は現生人類と同等の知能を持ったと考えられています。一部の化石の出土の状況には埋葬を行っていたと解釈できるものもあり,そうであれば死や死者を特別視する何らかの観念を持っていたことになります。ネアンデルタール人の絶滅の原因には諸説あり,環境的要因や交雑による吸収などの説があります。他の選択肢はいずれも新人(現生人類と同種)の化石で,クロマニョン人はフランス,周口店上洞人は中国,港川人は日本で発見されました。

【問題1】の問2について

現生人類の種名であるホモ・サピエンスは、18世紀スウェーデンの学者で「分類学の父」とされるリンネによって命名されました。ラテン語で「知恵のある人」を意味しています。他の人類も「ホモ・○○」という種名を与えられています。例えばネアンデルタール人であれば、「ホモ・ネアンデルターレンシス」と呼ばれます。
また、人文学でも「人間は何をもって人間たりうるか」を考える際に「ホモ・○○」という表現が用いられます。例えば、オランダの歴史学者ホイジンガは『ホモ・ルーデンス』(遊ぶ人、という意味)という本で人間の本質が「遊び」であると論じました。「ホモ・サピエンス」という名付けも人間の本質を「知恵」や「理性」に見るリンネの立場の表れと言えます。

【問題1】の問3について

現生人類の細胞核ゲノムのうち、ネアンデルタール人由来とされる塩基配列は1〜4%とされています。とはいえ、全ての現生人類がネアンデルタール人由来の塩基配列を持つわけではありません。ペーボ博士らがネアンデルタール人のゲノムと世界各地の人々(現生人類)のゲノムを比較したところ、アフリカのサハラ以南に暮らす人々はこの配列を持っていないことがわかりました。一方で、サハラ以南以外の地域の人々のゲノムに含まれるネアンデルタール人由来の塩基配列の割合は、どこに住んでいる人でも同じくらいであることがわかりました。このことから、ペーボ博士らは現生人類がアフリカから拡散し始めて中東に至った段階で交雑が起きたものの小規模で、またその後の交雑の機会は少なかったと結論づけました。

【問題1】の問4について

人類は進化の段階に合わせて猿人、原人、旧人、新人に分類されます。そもそも何を持って人類と類人猿を区別するかですが、古人類学では直立二足歩行などが基準となっています。現状で最古の人類とされるのはチャドで発見された700万〜600万年前の人類であるサヘラントロプス・チャデンシスです。これやアルディピテクス(440万年前)、アウストラロピテクス(420万〜200万年前)といった人類が猿人に分類されます。原人は猿人と比べると脳容積が増えて知力が向上したとされます。火を使用した痕跡なども見られます。この段階にはホモ・ハビリス(240万〜180万年前)、ホモ・エレクトゥス(180万〜20万年前)などが含まれます。ジャワ原人や北京原人はホモ・エレクトゥスの仲間です。旧人は約60万〜3万年前に生存していたとされます。脳の容積は現生人類より多いものも見られ、道具としては大きな石の一部を割り取って作った剥片石器などを用いました。新人は化石人類のうち、ホモ・サピエンスであるものを指します。

【問題2】の問1について

裾野産業とは一つの製品を生産するために必要な部品等を供給する業者を指します。例えば自動車会社は自動車製作のための部品を様々な会社から購入しています。一方これらの会社も、自動車会社に納品するための部品を製作するために、別の会社から製作に必要な部品を購入しています。そして、さらにその会社は別の会社から部品を購入しています。愛知県では、特にトヨタ自動車によって自動車を作るための裾野産業が構築されています。このようにトヨタ自動車やその関連企業が多数所在する西三河地方が特に製造業が盛んですが、尾張地方でも、プリンターやミシンの生産を行うブラザー工業や食品生産を行うカゴメ株式会社などが存在し、様々な製品が生産されています。

【問題2】の問2について

グラフを見ると、愛知県はキャベツの出荷量の都道府県別割合が19%とあります。このことから愛知県のキャベツは全国シェアがおよそ2割とわかります。愛知県の平野部の中でも西部の尾張や西三河地方は比較的寒暖差の激しい地域ですが、東三河地方、特に渥美半島は温暖で、県内でも屈指の農業地帯となっています。キャベツの他にもトマトやしそなども多く生産されています。

【問題2】の問3について

電照菊とは出荷時期を調整するために人工的に照明を当てて育てた菊のことです。菊は日照時間が短くなると花芽が形成され、やがて花が咲くので、太陽の代わりに照明を用いて花が咲く時期をずらす栽培法です。主にビニールハウスを用いるこの栽培法は夜に電灯をともすことから、電照菊の栽培がピークとなる秋頃には一帯のビニールハウスが明るく照らされて、夜景を楽しむこともできます。

【問題2】の問4について

選択肢の中で愛知県出身なのは将棋棋士の藤井聡太竜王だけです。藤井さんは2021年に、名古屋城からほど近い名古屋能楽堂で行われた対局中にバニラアイスの「ぴよりん」を注文し、話題になりました。近年では将棋の対局の内容だけでなく、「観る将」と呼ばれる対局中の所作や食事などに注目する将棋ファンも増えており、対局中の食事は「将棋めし」と言われることもあるようです。

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2022年11月4日号

A面「ワークシート」の解答ポイント

【問1】

日本の若手研究者が立たされている苦境とはどのようなものか、資料を参考に、具体的な例をいくつか挙げてみよう。

【解答例】

【解説】
【資料1】と【資料2】、およびツイッターでの声を集めた図を参照してまとめましょう。【資料1】では第1段落で奨学金について、第2段落で企業への就職活動で不利になることが語られています。ツイッターでの声にも奨学金についての話題があるので関連をおさえられるとなおよいでしょう。
【資料2】では第2段落から女性差別の存在、第4段落から研究職のポストの得にくさがわかります。雇用についてはツイッターでも不安定さや任期について触れられているので合わせておさえましょう。

【問2】

【資料2】の下線部にある「基礎研究」とは、研究対象の本質に迫る研究を指し、多くの場合金銭的な利益には直結しないものである。こうした研究を支援するときに意識すべきことは何か、考えをまとめてみよう。

【解答例】
利益につながる見通しがあるかどうかだけで評価せず、長期的な視野を持って支援を続けていくこと。

【解説】
「基礎研究」とは、設問文の通り研究対象の本質に迫るような研究です。例えばブラックホールが存在することを証明したり、物理学の量子の性質を明らかにしたり、「酵母」という単細胞生物について研究したりすることなどがあたります。多くの場合研究者の純粋な興味に基づいて始められ、何かの役に立つことや新たなものの開発につながることを意識せずに研究が進んでいくため、お金に直結するような研究とはなりにくいものです。
しかし例えば「酵母」の研究のなかで「オートファジー」と呼ばれるタンパク質の分解の仕組みが明らかになった結果、他の生物の「オートファジー」の研究を大きく前進させ、ゆくゆくはパーキンソン病などの神経性疾患やがんの治療法の開発につながるのではないかと期待されるようになるなど、科学と人類の発展に大きな貢献をすることもあります。この「酵母」の研究をした大隅良典氏は2016年にノーベル生理学・医学賞を受賞しましたが、受賞までに「酵母」について40年ほど、「オートファジー」について28年ほど研究を続けており、成果が認められるまでに長い時間がかかるものでもあります。
このような研究に対する支援として、主に金銭面での支援が求められていることは資料全体から読み取れるでしょう。研究者はお金になりにくいことを長期間続けていくのですから、外部から金銭的支援を受けなければ継続できないのは当然とも言えます。
しかしこの事情を、支援をする側の視点から見ると、多額の支援をしても、成果も利益もなかなか出ないことになります。短期的な利益を求めたり、成果だけを重視する姿勢では、基礎研究にお金を投じ続けることは難しいといえ、反対に、物事を長い目で見て、成果や利益によらず継続的に支援を続けていく姿勢が、基礎研究の支援には必要だと考えられます。
また、こうした視点は基礎研究以外の研究の支援にもある程度必要です。基礎研究の対義語は「応用研究」などであり、例えば「オートファジー」とがんの関係を明らかにしようとするような、実用に向けた研究を指しますが、新たな研究、開発である以上、トライアンドエラーを許容して継続的に支援することが大切です。
解答例は以上のような考えに基づいて作成しましたが、まだ成果や利益が出ない研究も含めて幅広く支援していくべき、というような解答も書けるでしょう。基礎研究は基本的に特定の目的や応用を意図しないため、何の役に立つか分からないことがあります。しかしこうした研究が折り重なって人類は発展してきたのであり、将来のイノベーションのためにも欠かせない研究分野でもあります。
よって、成果や計画の優れた研究を選んで研究費を与えるなどの支援方法では基礎研究は評価しにくいといえます。現在示せる成果や計画によらず、幅広い分野を支援していく姿勢が大切だといえるのです。

【問3】

日本の研究力低下の原因として、国立大学の運営資金の不足が挙げられている。運営の基盤の一つには国から配布される「運営費交付金」があるが、その額は少しずつ減少してきた。これを踏まえて、日本の研究力を維持する方法を考えてみよう。

【解答例1】
民間企業など大学以外での研究の充実を図る。営利組織での研究は実用的なものに偏りがちだが、長期的な視野を持つ取り組みには奨励金を出すなどして優遇する。博士号取得者の就職先の確保にもつながると思われる。

【解答例2】
公的資金を元手として投資を行い、その運用益を大学の運営資金に充てる。また、大学が研究内容を積極的に公開し、クラウドファンディングを通じて市民から資金を調達する。継続的な人件費、研究費の増収が見込めるのではないかと考える。

【解説】
設問が問う「日本の研究力を維持する方法」に直接つながるのは何かと考えると、資料を参考にすれば、若手研究者を苦境から救い、研究を安心して続けられるようにすることだといえます。若手研究者は問1のように様々な問題を抱えていますが、長く研究を続けるうえでは、特に安定した雇用を確保することが重要になるでしょう。
設問文は「運営費交付金」に触れており、この減少が現在の国立大学の運営資金不足と若手研究者の雇用ポストの減少、不安定化につながっていると思われます。しかしこの金額を増やすと単純に解答するだけでは不足感が残ります。「運営費交付金」を増やすと、学術・研究の分野への国の支出が増えることになります。読売中高生新聞の読者のみなさんならご存知の通り、日本は現在学術・研究以外の分野にも多くの問題を抱えていて、お金に余裕があるとはいえない状況です。そのなかで支出を増やすのであれば、他の分野よりも優先して問題を解決する理由を説明したり、国の収入をどのように増やすのか示したりする必要があるでしょう。
解答例では「運営費交付金」に頼らずに若手研究者を支援する方法を考えてみました。方法は様々ですが、問2で見たように、長期的な継続を視野にいれて支援したいところです。
【解答例1】は民間企業での研究の充実を促進するという方法を挙げてみました。民間企業はお金を稼ぐ能力が高いので持続的な研究が期待できますし、企業自体の数が多いので研究職のポストも多くつくりだせます。しかし、問2でも見たように民間企業は成果や利益につながりにくい研究には費用を投じにくいので、研究内容が偏らないように調整する必要があります。
【解答例2】は大学の運営資金を増やす方向で書きました。研究者が大学で安定した職を得られるようにしようという考えです。投資の運用益は時間が経つごとに増えていくことが多いので、継続的な支援には適した方法といえます。
実際に、投資の運用益を使って大学を支援しようとする取り組みも始まっています。政府は10兆円規模の「大学ファンド」(ファンドとは基金のこと。複数の組織などからお金を集めて投資する)を設立し、株式などに投資して、年3000億円の運用益を上げることを目指しています。そしてその中から大学への助成金を出す計画です。
しかしこれは


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