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2024年1月5日号

A面「ワークシート」の解答ポイント

【問1】

日本の家庭において「和食離れ」が進んでいる原因としてどのようなことが挙げられるか。資料から読み取り、説明してみよう。

【解答例】

・日本でも欧米流の食生活が普及したから。

・和食は手間がかかるから。

・年中行事などで伝統的な和食を家族や親戚と食べる機会が減っているから。

【解説】

「日本人の和食離れ」については【資料1】で触れられているので、それをもとに考えてみるといいでしょう。
例えば、現在、日本の食生活は欧米流が主になり、米や魚よりも肉やパンを好むようになったということが挙げられるでしょう。外にも、忙しい毎日のなかで、手間のかかる和食を用意することが敬遠されていることや、おせち料理や地域の伝統料理など、和食と深く結びついている年中行事もなかなか行われなくなり、家族や親戚が集まって食卓を囲む機会が減っていることも原因の一つとして挙げられます。

【問2】

日本のだしを世界に広めようと考えたときに問題となりうることにはどのようなことがあるか。資料から読み取り、説明してみよう。

【解答例】

・出汁の取り方に関する考え方が違うため、ただそのまま紹介するだけでは、味を再現できないということ。

・世界の多くの地域で利用されている「硬水」では、ミネラル等の成分が邪魔をしてうまく出汁がとれないため、「軟水」を用いなければならないこと。

【解説】

海外の多くの国々と日本で出汁の取り方に違いがあるということは【資料2】で触れられています。フランス料理の「ブイヨン」や中華料理の「湯」は長時間煮込むのに対し、日本の出汁は昆布やかつお節、煮干しなどを短時間煮て作られます。
また、それらの違いの主な理由として、調理に使う水の違いが説明されています。ミネラル分を多く含む「硬水」が主流の諸外国に対し、ミネラル分の少ない「軟水」を主に利用している日本では、昆布などのうま味成分が抽出しやすく、出汁の文化が根付いたのだと考えられます。
つまり、日本の出汁を世界に広めようとする場合、このような調理の方法や水の違いについて理解したうえで説明をしていかなくてはならないということになるでしょう。単に日本の方式を伝えるだけでは、出汁の良さを十分に伝えることはできないと考えられます。

【問3】

あなたが世界に向けて紹介したいと思う日本の文化を一つ挙げ、紹介する際に注意すべきことを考えてみよう。

【解答例】

・私が世界に向けて発信したいと考える日本の文化は、寺社仏閣などの伝統的な建物だ。これらは長い歴史を持ち海外からの人気も高いが、禁止されているところで動画を撮影するなど外国人観光客のマナーの悪さが問題になっている。そのため、複数の言語に対応した注意書きを用意するなどの対応が必要になるだろう。

・私が世界に向けて発信したいと考える日本の文化は、アニメやゲーム、漫画といったサブカルチャーである。すでに日本の漫画が海外で流行した事例もあるが、国によってはピースサインが侮辱の意味を表すなど、日常の習慣や物の捉え方の違いから、日本では当たり前に受け入れられているものが海外では問題になることもある。そのため紹介するものを厳選したり、解説をつけたりする必要もあるのではないかと考える。

・私が世界に向けて発信したいと考える日本の文化は茶道である。おもてなしの精神や、わびさびといった日本独自の考え方を海外に広めるいい機会になると考えるが、細かい作法は日本人でも知らない人が多く、海外の人にも理解しやすいように説明の方法を模索する必要があると思われる。また、正座をする習慣がなく、長時間続けることが難しい人のためにルールを緩和できないか検討していくことも有効だと考える。

【解説】

紹介してみたい日本の文化と、それを紹介する際の注意点について述べる問題です。みなさんは「日本の文化」と聞いてどのようなものを思い浮かべたでしょうか。今回は解答例で挙げた三つを軸に考えてみましょう。
まずは、和食と同様に伝統的な日本文化が考えられるでしょう。解答例で挙げた寺社仏閣などの建物はその代表的なものだといえます。実際、海外からの観光客は行きたい場所として京都を挙げることが多いといわれています。しかし、これらの建物は築1000年以上のものも多く、扱いには十分な配慮が必要です。このような伝統的な日本文化としては、他に着物などが考えられます。
そして、日本の文化といえるものは、何も古いものばかりではありません。アニメやゲーム、漫画といったサブカルチャーも世界に向けて発信しうる日本の文化といえるでしょう。しかし、作者は基本的に日本で暮らしている人なので、日本の生活習慣や考え方に基づいてこれらを作成していることになります。そのため、海外の人が読んだときに意図がうまく伝わりにくい場合もあるでしょう。このような問題を避けるためには、海外向けに翻訳する際の表現について吟味したり、ときには解説を添えたりして、理解しやすいように配慮する必要があると考えられます。
もう少し細かいくくりで考えてみるのもいいでしょう。今回はその例として「茶道」を挙げました。茶道もまた、古くから続く伝統的なものであり、客人をもてなす心やわびさびといった独自の考え方をもつものです。しかし、実際に海外に広めることを考えると、作法の難しさ等が問題になってくるでしょう。異なる言語を母語とする人たちにどのように伝えればよいのか模索していく必要があります。また文化の違いでいえば、基本的に椅子に座る生活をしている人が長時間正座をすることは難しいのではないかということ等が挙げられます。
以上のように、海外に向けて日本の文化を紹介するときには、環境や言語、考え方が異なることを理解したうえで対策を考える必要があるでしょう。また、【問3】では最初に自分で考えた「紹介したい日本の文化」を挙げる必要があったので、ここで悩んでしまった、答えが考えられなかったという人もいるかと思います。小論文では、ときに日ごろから様々な情報に対してアンテナを張り巡らせることができているかということが問われる場合があります。その際は、新聞を読んだり、気になったことは調べたりといった日々の積み重ねが皆さんの力になります。日ごろから意識してみるとよいでしょう。

B面の解答ポイント

【問題1】の問1について

邪馬台国は、 30ほどの小国を統一した連合国家で、身分秩序や租税、刑罰の制度も整っており、その国の女王として巫女である卑弥呼が治めていたとされています。「魏志倭人伝」の記録には、長い間国内で戦乱が続いていたので、諸国が共同して卑弥呼を王として立てたところ、ようやく収まったとあります。そして、卑弥呼は239年に中国(魏)の皇帝に使いを送り、「親魏倭王」の称号と金印などを授かり、その権威を背景に支配力を強めました。3世紀半ばの卑弥呼の死後、男の王が跡目を継いだものの倭国が治まることはなく、壱与という卑弥呼の一族の女子を王とすることによって再び国が治まったと「魏志倭人伝」には記載されています。なお、邪馬台国の場所についてはいまだ不明で、九州北部にあったとする九州説と近畿地方の大和(奈良県)にあったとする畿内説とで古くから議論されています。

【問題1】の問2について

日本では701年の大宝律令の完成によって天皇を頂点とする中央集権国家が整い、「日本」という国号もこの頃に正式に用いられるようになりますが、その際に日本が模範としたのが中国王朝の唐です。618年に隋を滅ぼし中国を統一した唐は、律令(律は刑罰に関する法、令は役所の組織・職務や税制など政治に関する法)を定めて人民の名前や性別などを戸籍に登録し、それに基づいて人民に田を与え、税や兵役の負担を課すという中央集権国家を形成しました。また、都の長安は人口約100万人の世界的な都市で、国際的な文化が発展し、日本もその政治制度や文化を取り入れようと遣唐使が8世紀にはおよそ20年に1度の割合で派遣され、日本に多大な影響を与えました。

【問題1】の問3について

消費税は1989年に大型間接税として導入され、その当時は一律3%でした。その後、1997年に5%、2014年に8%、そして2019年に10%(一部8%)と徐々にその税率は高くなってきています。消費税が導入されたのは、本格的に到来する少子高齢化社会において、働いている世代だけでなく全ての人々で社会を支えることができる税の体系を構築し、社会保障などの公的なサービスの費用をまかなうための安定的な歳入を確保することなどを目的としたことにありました。ただし、消費税の是非については現在も議論されています。例えば、消費税は個人の所得に関わりなく同じ割合で税金を負担しなければならず、所得の少ない人ほど税負担の割合が高くなるという特徴があるため(このことを逆進性といいます)、不公平であるといった意見などもあります。

【問題1】の問4について

軽減税率は、2019年の消費税10%の引き上げと同時に導入されました。高所得者よりも低所得者層が重い税負担を強いられるという逆進性の対策として、飲食料品や新聞に対して税率を8%のまま据え置くという制度となっています。軽減税率制度は低所得者への対策とされていますが、対象品目の基準が明確であるのかというのはいまだに議論の対象となっています。例えば、甘酒、アルコール分1%未満のみりん風調味料やノンアルコールビールは飲食料品として軽減税率の対象となっているのに対し、通常のみりんや調理酒などは飲食料品とはみなされていないため、その対象ではありません。また、週2回以上発行される、定期購読されている新聞はその対象となっているのに対し、コンビニなどで販売されている新聞はその対象ではなく、そもそもなぜ新聞だけが対象なのかという疑問も出されています。軽減税率の境界線はかなり曖昧で、この制度が続く限り今後も議論の対象となっていくでしょう。

【問題2】の問1について

『罪と罰』は、自身の思想に基づいて老婆を殺害した青年ラスコーリニコフが、犯した罪に苦悩する姿を描いた小説です。この小説を書いたドストエフスキーは、19世紀のロシアを代表する作家として知られ、その他の代表作に『カラマーゾフの兄弟』があります。
1866年に出版された『罪と罰』は、これまでに何度も映画化や舞台化、漫画化などがなされており、手塚治虫も1953年に『罪と罰』を漫画化しています。なお、手塚治虫はそれ以外にも、ゲーテの戯曲『ファウスト』や、シェイクスピアの戯曲『ヴェニスの商人』なども漫画化しています。

【問題2】の問2について

AIは、「人工知能」を意味する英単語「Artificial Intelligence」の頭文字を取った略語で、人工知能を意味する言葉として広く使われています。
人工知能(AI)とは、事前にインプットされたデータや、センサーなどを通して得られたデータをもとに、コンピュータが自ら推論し、問題解決や意思決定を行うことをいいます。これは、私たちが今までに覚えてきたことや、日頃見聞きしたことを基に、特定の問題に対して自分の頭で考え、答えを導き出すことと似ています。
今回の『ブラック・ジャック』最新話制作プロジェクトでも、人間が提示したいくつかの単語や質問を基に、AIがストーリーのプロットやキャラクターデザインを提案するという形で、AIが大きな役割を果たしました。

【問題2】の問3について

設問にある通り、「拡張子」とは、保存されているファイルがどういう種類のデータなのかを示すために付けられる文字列のことです。たとえば「example.txt」と書かれているファイルの場合、末尾の「.txt」が拡張子です。
一つの種類のデータでも、拡張子はいくつかの種類があり、それぞれ圧縮率の良さや、元のデータに復元できる度合いといった点に違いがあります。

ア 「.txt」はテキストデータによく使われる拡張子です。

イ 「.mpeg」は動画データに使われる拡張子で、一般に画像データには使われません。画像データとして使われる拡張子には「.jpeg(.jpg)」「.bmp」「.png」などがあります。

ウ 「.mp3」は音声データによく使われる拡張子です。音声データとして使われる拡張子にはほかにも「.aac」「.flac」などがあります。

エ 「.avi」は動画データによく使われる拡張子です。動画データとしては、ほかにも「.mp4」や、選択肢イでも登場した「.mpeg」などがよく使われています。

【問題2】の問4について

AIに画像を学習させることにより、その画像の作風などを踏まえた新しいイラストを生み出すことができます。今回の『ブラック・ジャック』最新話制作プロジェクトでもその技術は利用され、故人の作風を蘇らせて新たな作品を生み出しました。
これと同様にして、人物の画像や声、動きなどをAIに学習させ、これを既存の動画と合成させることによって新たな映像を生み出す技術も開発されてきました。このようにして生成された画像や映像は「ディープフェイク(deep fake)」と呼ばれ、本来は映画などのエンタメの場を想定して開発・利用がされてきました。
しかし中には、生成された画像・映像があまりにも精巧であるため、実在の人物や出来事であると誤解してしまうようなものを生成し、悪用する事例も出てくるようになりました。ディープフェイクによって引き起こされた問題として、実際には発言していない内容を政治家がさも発言しているかのような動画が出回った、検索サイトでヒットした生き物の画像のほとんどがAIによって作られた偽の画像であったなどの事例があります。
AIに限らずあらゆる技術について言えることですが、技術がもたらす影響には良い点と同時に悪い点もあります。そして悪い点というのは、必ずしも意図的な悪用によってのみ生じるものではなく、技術を万全万能なものと過信し、漫然と使ってしまうことによっても生じることがあります。新しい科学技術に対して、私たちは、その技術のメリット・デメリット双方を理解し、その技術を利活用することが求められることになります。

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