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具体的な研究の例を1つ2つあげてみます。

まず、心理学実験としてよく行われるのが「錯視実験」です。これはミューラー・リヤーの錯視などに代表される錯覚を起こす図形を用いて、それがどのくらい起こるのか、実験的に調べることを目的としています。

ミューラー・リヤーの錯視を用いた実験で説明しましょう。この場合、市販の実験器具として「錯視図形」が用意されています(2, 3万円します)。これは板2枚が重なっていて、表に図形が、裏には長さの目盛りが書かれています。板の片方は固定されていて、もう片方が自由に動かせます。被験者は実験者の指示に従ってその図形を動かして見ます(調整法の場合)。そして、右の板と、左の板、それぞれの直線の長さが同じに見えたとき、そう言ってもらい、そのときの目盛りの値を測定します。

[ミューラー・リヤーの錯視図形+]

こうしてデータを得ると1回ごとにかなりばらつきが出ます。そのために何十回、何百回と測ります。実験条件も変えたりします。そうして得た大量のデータを「目盛りの値」という数値として集め、それを合計し、そこから「分散」というものをとります。結果的にはそこから「標準偏差」も得て、グラフ化し、どの実験条件のとき、一番錯視が現れやすいのかを検討します。

これが代表的な実験的方法です。これに比べれば調査・観察的研究は、非常に小さなところから始まります。

たとえば、女性のアイデンティティについて研究したいとします。そのためにまず、どの世代を研究するのか、そしてその人たちからどうやってデータを取るのか、それをじっくり検討します。また、その結果、質問をいくつかして、それに対する答えから研究を行うと決めた場合、この質問を作ることも行います。

質問は「多分こう聞けば、これが測れるだろう」というあいまいな意味付けでは使えません。これは後に「テストの信頼性と妥当性」というテーマで、非常に重要な意味をもってきます。ここでは難しい話はおいておきますが、とにかく質問項目の候補を100も200も作って、それを問題の種類別にグルーピングし、プレテストを行って、ある程度、質問の内容を整えたりします。この辺の具体的なことは、後の回で追々触れていきます。

こういう風に新たに質問を作るのではなく、今ある質問紙を活用して調査を行うとした場合は、その手間を省くことができます。ただそのときは、その質問紙が測りたいものをちゃんと測れるのかどうか、信頼性と妥当性は常に検討しなければなりません。

これら地道な作業が済んで、どうにかこうにかテストが出来たら、ようやく調査が実施できます。ただこのときも、「成人女性100人」といった区分ではあいまいすぎます。心理現象には年齢や環境などによって差が出ることもあるからです。それをなんとかするために、「20代、30代、40代、50代、それぞれの職業の内容によって分ける」といったことをよくします。

こうやって何とかサンプルを集めることも出来て、調査も実施できたとなると、その結果を持ち帰って、今度は分析を行うことになります。相関分析という2つの変数がどれくらい関係しているかを調べる分析を行ったり、因子分析という因果関係を見る分析にプロマックス回転とかバリマックス回転という操作を加えたり、共分散構造分析で相関構造を調べたりします(この辺、わからなくて当然なので、あまり気にしないでください)。こうやった結果から、研究結果を導き出します。

このように心理測定というのは心理学研究を行う上で、なくてはならないものということが出来ます。この「心理測定法」では、その理論から、応用にいたるまで、幅広く見ていこうと思います。

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